STORY
「このまま、この働き方でいいんだろうか?」
学習塾で働いていた8年間、子どもたちと向き合う日々はやりがいに満ちていました。でも、いつしか毎日がただ過ぎていくように感じるようになっていました。
そんなとき、ふと思い出したのが学生時代に学んだ「農業」。机の上ではなく、自分の手で何かを育て、誰かに届けるような生き方に惹かれていたこと。いまなら、あのとき憧れていた世界に飛び込めるかもしれない。そう思ったら、心が自然と動きました。
30歳のとき、思い切って仕事を辞め、福岡県の農業大学校へ。人生の再スタートでした。
そこで改めて土づくりや作物の管理を学びながら、「これを本業にするなら、どこでどんな農業をやりたい?」と考える日々。そんなとき、ある出会いが次の扉を開いてくれました。
農業大学校の卒業を目前に、大木町でアスパラガス農家をされていた方が引退されるという話を聞きました。
「やってみますか?」と声をかけていただき、その畑を引き継ぐことに。こうして、私たちの農業人生が本格的に始まりました。
最初は何もかも手探りで、失敗もたくさん。でも、ひとつひとつの作業に向き合い、土に触れているうちに、「自分たちは農家になったんだ」という実感が少しずつ芽生えていきました。
そして2年後、新しい挑戦の話が舞い込んできます。町の方から「いちごの観光農園、やってみませんか?」という提案でした。
いちごはもちろん、観光農園なんて未知の世界。不安はありましたが、どこかワクワクしている自分たちもいました。「どうせやるなら、自分たちらしい農園にしよう」そう決めて、一歩踏み出すことにしたのです。
いちご栽培の経験はゼロ。だけど、「自分たちが食べて本当においしいと思えるいちごを、お客さんにも味わってほしい」という気持ちは誰にも負けないつもりでした。
土の状態、水やりのタイミング、苗の扱い方……最初は試行錯誤の連続でしたが、「この育て方ならきっと甘くなる」「こんなレイアウトなら、家族でいちご狩りしやすいかも」など、お客さんの笑顔を想像しながら準備を進めていきました。
農園の名前は、“ラ・フレーズ”。フランス語で「いちご」という意味です。「ちょっとおしゃれで、覚えてもらいやすい名前がいいよね」と、軽やかな気持ちで名付けました。
そして2017年、ラ・フレーズがオープン。
以来、たくさんのご家族や子どもたちが、私たちのいちごを楽しみに訪れてくださるようになりました。「あま~い!」「大きいの見つけた!」といった声を聞くたびに、「やってよかったな」と心から思います。
いちごを育てる場所であり、思い出を持ち帰ってもらえる場所でもある――それが、私たちのラ・フレーズです。
これからも、季節ごとに甘く実るいちごとともに、みなさんの笑顔が咲くような農園を目指して、日々いちごと向き合っていきます。
福岡県三潴郡大木町横溝12991090-2055-7017(平日10時~15時)